Mozillaは2018年8月7日(現地時間8月6日)、Windows PC、MacおよびLinux向けメールクライアントThunderbirdのメジャー・アップデートバージョン「Thunderbird 60.0」をリリースしました。
今回のアップデートは、前回リリースされた「Thunderbird 52.9.0(7月12日)」から約1ヶ月後のアップデートであるだけでなく、2017年4月にメジャーアップデートされた前回バージョン「Thunderbird 52.0」から1年余りのメジャーアップデートとなります。安定性及びセキュリティ問題を修正した Thunderbirdのメジャーアップデート版です。
「Firefox Quantum」で採用された“Photon”デザインが導入され、外観がFirefoxと共通となりました。また、Thunderbird 60.0はFirefox 60と同じレンダリングエンジン「Gecko 60」を搭載しており、バックエンドもFirefox 60相当となっています。
修正内容としては、タブの外観変更をはじめ、「Light」と「Dark」の2種類のテーマ選択や、WebExtensionテーマの有効化もできるようになっています。また、チャット画面のテーマも複数用意されています。そのほかにも数多くの新機能や修正、変更が行われています。
Thunderbird 60.0リリース ノート
新機能
- メッセージ作成中に、受取人を除去するための削除ボタンが追加された。このボタンは、宛先/Cc/Bcc の切り替え部にマウスをホバーすると表示される
- メッセージ作成中の添付ファイルの扱いに関する多くの修正: 添付ファイルの順番をダイアログ・キーボード・ドラッグ&ドロップによって変更することができるようになった。「ファイルを添付」ボタンが添付ペインの右上に移動された。添付ペインへのアクセスキー (ロケールによって異なるが Alt+M など、Mac なら Ctrl+M) が、添付ペインの表示/非表示の切り替えにも機能するようになった。添付ペインのヘッダー部での右クリックからのオプションで、添付ペインを初めから表示できるようになった。空ではない添付ペインを非表示にすると、クリップを模したプレースホルダーが表示され、添付ファイルの存在を示すことで意図しないファイル送信を避けることができるようになった
- 「テンプレートを編集」コマンドの追加。これにより、テンプレートの保存に関する多くの問題が解決する (重複での作成、メッセージ ID の消去など)
- 「テンプレートから新しいメッセージを作成」コマンドの追加
- ステータスバーからスペルチェックの言語を変更できるようになった
- Light および Dark テーマの追加
- WebExtension が有効となった
- アドレス帳ウインドウの既定の初期フォルダーを設定可能となった
- フィードの更新間隔を個別に設定可能となった
- 「オプション (Mac ならツール) > オプション > 詳細 > 一般」から、日付と日時の書式を Thunderbird 自体の言語と OS の地域設定の言語から選択できるようになった。これにより、例えば英語版の Thunderbird でドイツ語の日付と日時の書式を利用することができるようになった
- Yahoo および AOL での OAuth2 認証をサポート
- FIDO U2F をサポート
- フォルダーの保存形式を mbox から maildir に変更することができるようになった (逆も可)。この機能は未だ 実験的なものであり、mail.store_conversion_enabled を true に指定する必要がある。「Windows Search によるメッセージの検索を許可する」が有効になっていると、この機能は機能しない
- カレンダー: 選択したイベントあるいは繰り返しイベントのコピー・切り取り・削除が可能となった
- カレンダー: 日ごと・週ごとの表示に、イベントの場所を表示するオプションを追加
- カレンダー: ポップアップを表示する代わりに、通知を直接送信する/しないを選択できるようになった
- カレンダー: イベントやタスクをコピーする際に、コピー先のカレンダーを選択できるようになった
- カレンダー: サーバー側でのスケジュール管理が有効な CalDAV サーバーに対して、メールでのスケジュール管理が可能となった
- チャット: 複数のメッセージテーマを追加
変更
- 重要: 作者によって Thunderbird 60 非対応とマークされていないアドオンは表示されなくなった (extensions.strictCompatibility を false にすることで無効化できる)
- IMAP: 送信済みメッセージのサーバーへの保存に失敗した場合、ローカルフォルダーに保存されるようになった
- アドオンマネージャからアドオンの設定を変更できなくなった。代わりに「アドオン設定」メニューが追加された
- 段落形式でメッセージが編集されている場合、エンターキーの押下でメッセージ本文と引用部が段落に変換されるようになった
- 「新しいメッセージとして編集」において、元メッセージの形式 (テキストあるいは HTML) ではなくアカウント既定の形式が使われるようになった
- 「下書きメッセージを編集」において、シフトキーによってメッセージの形式を変更することができるようになった
- テキスト形式から HTML 形式への変換が改善された
- アドレスの入力中に、アドレス候補との一致部が太字で表示されるようになった。mail.autoComplete.commentColumn により、アドレスが登録されているアドレス帳も表示できるようになった
- ドラッグ&ドロップによってメッセージを添付する場合、”Attached Message” の代わりに添付メッセージの件名が添付ファイルの名前となるようになった
- アドレス帳での写真の扱いの改善: ドラッグ&ドロップによって写真を追加できるようになった。すべての写真のコピーが Thunderbird のプロファイル内に保存されるようになった
- 初回起動時に、アカウントの作成ダイアログではなく、アカウントのセットアップダイアログが表示されるようになった
- Firefox の Photon デザインに追従
- 差出人アドレスをカスタマイズしている場合、そのアドレスを SMTP の “MAIL FROM” コマンドに使用するようになった (以前は差出人アドレスとして設定されたアドレスを使用)。mail.smtp.useSenderForSmtpMailFrom によって以前の挙動に戻すことが可能
- Linux: ネイティブ通知が有効となった
- Mozilla の最新のプロキシ技術を利用するようになった (FoxyProxy アドオンが利用可能)
- Servo をベースとした Quantum CSS エンジンやメッセージのエンコード、表示のための encoding_rs など、Rust をベースとした Mozilla の最新技術を利用するようになった
- カレンダー: Outlook 2002 およびそれ以前との互換性のある招待メッセージの送信機能の除去
- カレンダー: 「書き込み可能カレンダーの失敗したアラームを表示する」を有効にしていると、読み込み専用カレンダーのアラームは表示されなくなった
- チャット: 参加者リストにあるニックネームが色付けされるようになった
修正
- Thunderbird や他のメールクライアントが同じ IMAP の下書きフォルダーにアクセスしているとめっせーじが誤った差出人で送信されてしまうことがある問題を修正。差出人情報が下書きに適合しない場合、ユーザーに通知されるようになった
- IMAP のゴミ箱フォルダーに関する多くの問題の修正: 非 ASCII 文字が含まれる、ローカライズされた Thunderbird であるなど、特定の環境でゴミ箱フォルダーの指定が保持されない。余分なごみ箱フォルダーが繰り返し作成される。ゴミ箱フォルダーの指定がフォルダーの表示に反映されない、など
- 特定の環境で、IMAP の共有フォルダーが購読ダイアログに表示されない問題を修正
- 特定の環境で、IMAP アカウント間で移動されたメッセージから情報の一部が欠落する問題を修正
- メッセージヘッダーのエンコード/デコードの改善
- アドレス帳カード内のテキストが選択できない問題を修正
- パスワードに非 ASCII 文字を利用可能になった (áäß や €§ など)
- Outlook からのインポート機能 (注: 「すべてインポート」が現状では正しく機能しないため、メッセージ、アドレス帳、設定は個別にインポートする必要がある
- ローカライズされた Thunderbird において、Hotmail の “Deleted” フォルダーが正しくローカライズされて表示されない問題を修正 (日本語版なら「ゴミ箱」)
- アドレスサイドバー: 選択とコンテキストメニューの挙動
- Gmail の認証エラーの扱いの改善 (フォルダーの再ダウンロードを回避)
- 保存されたパスワードを更新しても、キャッシュされた古いパスワードを使用していた問題を修正
- カレンダー: いくつかのタイムゾーンにおいて、誤った時刻の書式を使用していた問題を修正
- カレンダー: 受信した招待のイベントダイアログから情報をコピーできない問題を修正
セキュリティ修正
なお、このアップデートでは合計14件のセキュリティ問題への修正が含まれており、重要度区分の内訳では[最高]5件、[高]4件、[中]5件となっています。
- [最高]CVE-2018-12359:Buffer overflow using computed size of canvas element
- [最高]CVE-2018-12360:Use-after-free when using focus()
- [最高]CVE-2018-12361Integer overflow in SwizzleData
- [高]CVE-2018-12362Integer overflow in SSSE3 scaler
- [高]CVE-2018-5156Media recorder segmentation fault when track type is changed during capture
- [高]CVE-2018-12363Use-after-free when appending DOM nodes
- [高]CVE-2018-12364CSRF attacks through 307 redirects and NPAPI plugins
- [中]CVE-2018-12365Compromised IPC child process can list local filenames
- [中]CVE-2018-12371Integer overflow in Skia library during edge builder allocation
- [中]CVE-2018-12366Invalid data handling during QCMS transformations
- [中]CVE-2018-12367Timing attack mitigation of PerformanceNavigationTiming
- [中]CVE-2018-12368No warning when opening executable SettingContent-ms files
- [最高]CVE-2018-5187Memory safety bugs fixed in Firefox 61, Firefox ESR 60.1, and Thunderbird 60
- [最高]CVE-2018-5188Memory safety bugs fixed in Firefox 61, Firefox ESR 60.1, Firefox ESR 52.9, and Thunderbird 60
既知の問題(未解決)
- 特定の CalDav サーバーへのアクセスに失敗することがある (応急的な対処法: network.cookie.same-site.enabled を false に設定する)
なお、Windows、Mac、Linux向けメールクライアント「Thunderbird」の最新バージョンは、既存のすべてのユーザーは自動的にアップデートすることが出来ます。ただ、既存のThunderbird 5以降からの自動アップデートは停止されているので、以下のように新規ダウンロードを行う必要があります。
また、新規にダウンロードする場合などでは、MozillaのThunderbirdダウンロードサイトからダウンロードすることができます。